胃がん術後ケア治療

胃ガンの男性(62)は全摘手術を受けました。抗ガン剤の点滴を3クール続けたところであまりに激しい副作用に耐え切れなくなり抗ガン剤治療を拒否し、当院に訪ねてみえました。

抗ガン剤を3クールもおこなえば、大抵の患者さんは耐えられなくなります。食べられない、髪の毛は抜ける、水を飲んでも吐いてしまう・・・等々。『本当にこれで良いんだろうか?』と誰だって考えてしまうでしょう。

治療を体験して初めて抗ガン剤の猛烈な毒性に気づくわけです。しかし、抗ガン剤治療を拒否すると西洋医学ではやるべきことはなくなり、退院して下さいと言われてしまうのです。

こうして医者に見放され、ガン難民にならない限り、人はガンの治療で鍼灸院の門を叩きません。検診で見つかった人が来られることはまずありません。

なので希望をもって来られるのではなく、他にないから仕方なくといった感じなのです。この方は抗ガン剤の副作用で特に足裏の痺れがひどく、まともに立てない状態でした。

抗ガン剤で肝臓がかなりのダメージを受けているのでまずは肝臓を強化する鍼治療を行ないました。痺れは足裏ばかりでなく、脚や腰にも出ていました。しかしこれも肝臓の機能が回復してくると徐々に取れていきます。

また、腹部を押して痛いときは鍼で傷痕治療を行い、あとは胃経や脾経のツボを取穴します。「三里」「陰陵泉」「三陰交」などで、さらに様子を見ながら必要ならば肝経のツボなども用います。

脚の付け根の太股骨の骨頭の関節の上にある胆経のツボ「環跳」が脚全体の痺れに有効でした。脈を診て治療を行なうため仕方は毎回違いますし、用いるツボも多少変わりますが、この方の場合は背部兪穴と「環跳」、あと足裏の「失眠」「湧泉」は毎回変わりません。

男性には週1回通ってもらいましたが、2ヶ月ほどで痺れは取れました。

胃を取ったことで起こるダンピング症候群の症状を和らげる上でも血液の循環を良くする効果は特定できませんが、経過は良好で楽しみに来られています。